2016年5月7日土曜日

同時通訳トレーニングを教室に:シャドーイングまでの道のり(家庭学習の定着を目指して)

授業で同時通訳トレーニングを使って、教科書の英文を音読、暗唱まで持って行きます。

英語を英語のまま理解すること、日本語と英語の理解を一体化させ、英語を英語のまま理解する回路を脳に作り込むことが目的です。授業では1015分くらい使ってこの活動をやりますが、この活動をやるときに一番大切なのは、「音の仕込み」と「意味の仕込み」をきちんとすること、そして、すり込む作業を根気よく行うことです。

「音の仕込み」は、英語の発音、抑揚、リズムのことです。英語特有の音の出し方、母音、子音の音の出し方をその都度練習します。また、段階を経て、子音の弾き方、消える子音、弱強のリズム、”take off-on the top-soft landing”の流れでイントネーションを身につける、などのトレーニングをします。この仕込みをやらないと、英語の音について行くのが困難です。ですから、音の仕込みはきちんとやります。

次に「意味の仕込み」についてです。予め立体構造トランスクリプトにて学習した英語の構文や英文法について、きちんと理解をしていることが前提になります。

「和訳のPREP読み」とは、和訳のコンテンツについて、自分で日本語で説明できるようにするトレーニング法です。前は和訳を音読させるだけで終わっていましたが、日本語でロジカルに情報を受け取る練習をすること、ロジカルに意見をまとめる練習をすることも、ここですることができるな、と気づき、今年から取り入れています。

トレーニングが始まったら、和訳と英文の間を何度も何度も行き来して、理解を明るくしていきます。一回でおしまい、ということはなく、何度も何度も和訳や英文に戻って、体に徹底的に意味をすり込んでいきます。

本当は内容の深い良質な英文でこれをやるのが理想ですが、それはそれ。

ここまでの段階に持って行って、自主トレを入れます。CDの音なしに、自分で英文を読み込み、自分が弱い部分を補強して、音をよりスムーズに出せるように練習します。

更に、その後、もう一度和訳を読み、英文と日本語の刷り込み作業を再び繰り返します。ここまでを丁寧にやってから、何も見ないで、目を開けて、CDの音だけでシャドーイングをします。

そうすると、シャドーイングをするごとに、英文がスラスラと言え、頭に意味が浮かび、更にもっと練習を重ねると、日本語の意味が出てこなくなり、英語を英語のまま理解できる状態に脳内が変化していきます。

大切なのは、根気よく、しつこく同じ内容を繰り返すことと、仕込みで甘かった部分に個人的に何度でも戻って自主トレをし、再度チャレンジしまくる、ということです。

授業では、子供達が自宅に帰ってからこのトレーニングを自動的に自分で出来るようになるまで、スキルをすり込みます。子供達は家に帰ると、音声CDと音読トレーニングノートを使って、自分のトレーニングをやり込み、弱点を分析しながら、次のレッスンに臨む、という形態を取って学習を進めていく流れになります。

とにかく、指導者は結果を焦らず、分量を多くせず、狭い範囲で細かい部分を徹底的にトレーニングし、中身を吟味しながら、子供達の様子を見て、反復を繰り返すことが大切です。

授業でシャドーイングや音読を取り入れられている先生方のお話を伺うことがあります。上手くいかない、というご相談を受ける場合、たいていは、仕込みの作業をせずにシャドーイングから始めたり、発音の指導をしていなかったり、和訳を十分に読み込ませてなかったり、英文のかたまりごとの理解を子供達に教えていなかったり、一度にトレーニングさせる英文の分量が多すぎることなどが、失敗の原因のように感じます。

生徒達に英語を体得させるには、仕込みの作業を絶対にサボらずにやることがポイントです。また、英文解釈的な説明が長すぎると、授業でトレーニングをする時間が取れなくなります。

授業で生徒にさせていないことは、家庭学習で絶対に定着させることはできません。ですから、CDを使っての指導をする際には、仕込みや音の指導がとても重要な意味を持つことになります。

指導者は生徒に家に着いていくことはできません。ですから、授業の中で、子供達が家に帰っても一人で勉強できるように、仕込みをして、十分に自分でトレーニングができるようなスキルを身につけないと、家に帰ってもトレーニングをしなくなります。

家庭学習を充実した物にするためにも、授業で確かなスキルをつけさせることはとても大切です。ですから、トレーニング活動はさぼれないし、気が抜けないのです。

この活動が延々と12月まで本編の活動として続きます。1年間掛けて、英語を英語のまま理解できる回路を頭に作っていく作業を繰り返して、子供達に力をつけてもらいたいと願っています。

*同時通訳TRの基本テクニック*→予めプリントにて文法事項や意味を確認済み、で、以下の流れ。

《第一段階:意味の仕込み→コンテンツに肉薄、まで》
1.英文の和訳を読んで全体を把握(PREP読みする)
 「要点はコレ→理由はコレ→具体的には、コレとコレ」で読む。
2.日本語PREPで内容を口頭説明(相手に伝える、を意識)
3.和訳をもう一度PREP読み

《第二段階:音の仕込み→発音の細かい所や弱強リズム意識》
4CDと共に構造表を見ながら音読
5.構造表を見ながら自主トレ音読
6CDと共に構造表を見ながら音読×2

《第三段階:音と意味の一体化→体にすり込むイメージ》
7.和訳をもう一度さらっと黙読
8CDと共に何も見ないでシャドーイング

《第四段階:一体化の実感化》
9.シャドーイング2回目
10.和訳を再びさらっと黙読

《第五段階:再補強》
11.自主トレで弱い部分を補強音読

《第六段階:英語が英語のまま出るイメージ》
12CDと共にシャドーイング


英語で話す:段階を経て徐々に少しずつ

毎回の授業の帯活動では、Oxford Essential Dictionaryを使ったスモールトーク(Q&Aを英語でし合う活動)をしたり、キクタンリーディングを使った早読み競争をしたり、扉の絵を使ったスモールトークなどをさせています。

毎回決まった活動をやることにより、生徒たちに積み重ねで力をつけて行ってもらうのが目的です。

帯活動は、どんなことでもできますが、毎回決まっていること、生徒たちにとってルールややり方が簡単で、かつ時間をそんなに取らなくてもできること、繰り返しができること、バリエーションがあることなどが条件で、生徒たちの様子を見ながら変えています。
Can-Doリストの初稿。まだまだ荒削りですがおおよその目安を作り、同僚と話をし、4月から1ヶ月かけてみてきた子供達の発達段階を加味して、練り直します。

生徒たちに英語で聞く、話す、読む、書く、の順序で英語を体得してもらうことを授業のゴールに据えていますが、到達にはフェイズがあり、今は第一段階「身の回りのことを英語で言う」「ものの名前を英語で言う」など、初歩的なことをどんどん英語で言う段階です。

まずは物の名前を英語で言うことから、好き嫌いなどを経て、調理法などの段階に進みます。簡単なことですが、丁寧にやらないとできるようにならないんです。
その次の段階には、数字を英語で言う、日時を受け答えする、時刻を言う、活動の時刻を言う、カレンダートークをする、などが来ます。

さらには、絵や写真を見て説明をする、まずは見えるものを言い、その後、より細かく詳細まで描写し、さらに感情、理由、原因、などを英語で言う段階に入ります。

その後、漫画を使って、英語で漫画をその場でどんどん説明していく活動をし、さらに絵を見ながらstoryを自分で作っていく練習をします。

その後、簡単なbook reviewや映画の紹介などを英語でできるようにしていき、その後、自分の意見をPREPで述べる練習をします。

まずはPREPの最後のPを省いて、「私はこう思う、理由はこうだ、具体的にはこれとこれ」という3点を英語で簡潔に言える練習を繰り返し、その後、結論のPでは、言い換え表現を用いて繰り返しを避ける練習をさせようと思っています。

描写力をここまで高めていき、その後、自分の意見を言う段階に入ることが高校1年生のゴールだと僕は考えていて、生徒と一緒に授業に取り組んでいます。

グループのディスカッションに入ったり、オーディエンスの前でプレゼンをする段階に入るのはかなり先の話になりますが、この段階を少しずつ経ることにより、生徒たちに徐々にアウトプット力を高めていかせるのが目的です。

帯活動だけではまかないきれないことも含まれていますので、これを教科書を絡めたり、他の教材を用いたりしてやっていきます。子供達は当然試験もありますから、試験のことも当然考えて授業をしなければいけません。

子供達は英語表現という授業の中で英文法をしっかりと学んでいます。コミュニケーション1の授業の中では、文法事項をその都度しっかりと確認し、練習しながら実際の活動と繰り返しリンクして、「頭でわかる」から「体で使える」段階にまで英語を刷り込んでいくことを目的にしています。

子供達が実際に使っているForestという参考書と問題集があるのですが、その目次を見て、年間の「話す」活動と文法事項をどのようにリンクさせていくか、また、英文法の授業だけでは身につかない「英語のロジック」と英文法をどのようにリンクさせていくか、実際のコンテクストを想定して、活動を創っていきます。手間が掛かり、骨が折れますが、これをやらないと、せっかく英文法をしっかり勉強しているのに、それがコミュニケーションの授業や活動とリンクしません。
授業雑記帳に参考書の目次を見ながら活動と英文法をリンクさせるメモ書き。
構文や文法事項はコンテクストの中でどのように使うか、ということがとても大事です。受け身や比較はlayerの視点を伴わないと会話や書き言葉で上手に使えるようにはなりません。

一口に「英語を話す」「聞く」と言っても、段階や様々な仕掛けが必要で、一朝一夕に「はい、これ!」という方法はなく、上記したようなことを丁寧に根気よく活動の中で定着させていかなければいけません。

来週からは"Flip-Talk"の活動を入れていきます。絵を見てQ&Aのセッションをする帯活動です。やり方は簡単で、カラーの絵とパウチの機械、トークの雛形(英語のQ&Aのパターンを印刷したプリント)があれば簡単に活動を行うことができます。20枚準備すれば、40人のクラスでもペア活動で20回活動を行うことが可能です。

活動の多い授業をしていると、行き当たりばったりでやっているのではないか、と思われたりすることもあるのですが、行き当たりばったりで活動をしていたら、子供達はすぐに飽きてしまい、真面目に取り組まなくなってしまいます。

細々とした仕掛けや準備、普段の英文法や英単語の学習とのリンクを深く何度も修正して加味し、少しずつ前に進む、という方法が遠回りでいて、実は一番確実にアウトプット力をつけていくコツなのです。

授業者として、これが実感を伴って理解できるようになるまで、20年掛かりました。all in Englishで授業を始めて4年目になりますが、去年まで考えていたことともまた全く違う次元に来た気がしています。

試行錯誤の連続ですね。でもやるしかないですね、子供達の為ですからね。

あ、今日は同時通訳トレーニングのシャドーイングについて書こうと思っていたんですけれど、帯活動について熱く書いてしまいました。シャドーイングのコツや日本語PREPの練習法などについてはまた体力のあるときに書きます。

書きたいことが山ほどあるけれど、体は一つしかないですね。分身の術があれば良いですが、あれは体が薄まっていけませんね。アニメで子供の頃、忍者が分身の術を使うシーンを見てると、薄く描かれていることがあったのを記憶していますが、あれは生身の人間は割り切れないのだ、ということを暗に示唆した優れた画法だったのでは、と仕事の忙しさの合間に唸ったりしています。

俺、何言ってんだろう笑。

ではまた^^;


★帯活動とは:毎回やるルーティーン活動のこと。広島県の胡子先生がこんな風に呼んでらっしゃることを知り、また、和田玲先生の勉強会「例の会」に参加した時にも、この名前が使われていたので、僕も「帯活動」という言葉を使うようにしています。

もっとも大いなるもの

単語の綴りを一生懸命練習するけれど、何度も、何度も間違える子がいる。 でも、授業中、何度もうなづきながら説明を聞き、話に耳を傾け、大きな声で歌を歌う。フォニックスの発音を、口を縦横いっぱいに開けて発音する。 oshienと単語テストに書いてきた。oc...