2016年5月16日月曜日

意見に層を作るlayerの概念



授業で子供達に文法を教えます。これは必要なことです。
ですが、これまでの学校英文法では補完しきれないことがあります。

英語の「お話の流れ」、「人に話をする時に心がけること」があります。これは高校生が勉強するどの文法書にも載っていません。

英語のものの考え方を、英語のロジックと呼んでいます。英語のロジックで話したり書いたりしないと、いくら英文法ができて、単語をたくさん知っていたとしても、一人の人の意見として、理解してもらえません。

例えば外国人の人が拙い日本語を使って一生懸命に何かを伝えようとする時、私たちはその人が我々に何を伝えようとするかを一生懸命に理解しようとします。

ですが、そういう場合、彼が何を言おうとしているか、ということよりも、彼が日本語がいかに上手いかということに気をとられて、肝心の中身の話になかなかならないのです。

これと同じ現象が、私たちが英語を使ってネイティブと話す時に起こっています。ですから、「あなた、英語が上手ですね。」とネイティブに言われているうちは、ネイティブからまともに意見を聞いてもらえていない(子供扱いされている)ことになる、と僕は考えています。

英語で相手にきちんと自分の意見を伝えるためには、英語でやり取りをしている人たちの文化的発想法を学ばなければいけません。どんな風に彼らはコミュニケーションをとるのが基本なのか、それが理解できないと、彼らが意見を交換している時に、意見として聞いてもらえないのです。

英語で話をする時、ネイティブはPREPの発想で無意識に会話を編んでいます。

PREPとは?
Point-Reason-Example(Evidence)-Pointの考え方です。
まず自分の主張を述べます( Point)。次に、なぜそのような考えに至ったのか、理由を述べます(Reason)。ここまでが英語の基本最小単位です。この単位を理解していないと、英語を話したことにはなりません。例えば、I like sushi.と言うと、聞いた人は、OK,じゃあ何故寿司が好きなの?という理由を待っています。その理由をきちんと説明しなければ、I like sushi.という文章は意味を持たないことになります。

次に、何故sushiがそんなに好きなのか、理由を裏付ける具体的な例、詳細な証拠を例示しないといけません。
その例示がないと、自分の意見が手前勝手なワガママな意見にとられてしまうからです。具体例を挙げる、たとえば、寿司を食べた経験、どうしておいしいと思ったのか、おすすめのお店はあるのか、どんな風に食べるのか、などの説明が必要になります。

★具体例に説得力を増すlayerの考え方
layerとは文字通り、層、の事です。話をするとき、具体例を挙げて相手にわかりやすい話をしていく際、事実や起こったことを羅列するだけでは効果がないので、具体例に変化をつけるのです。「過去は~だった。こんなことが起こり、~になった。今後は~になる。」などのように、Aの状況が変化してA’になり、更にA’’に変化していく、という変化の層をお話の中に盛り込むことにより、説得力が増すのです。

layerを作りやすくするためには、比較級を使ったり、受け身を使ったり、数値データを用いたり、時間の表現(年号や年月日)を使ったりして、変化をつけていくことが大切です。文と文の間に変化ができること、出来事と出来事の間に変化が感じられるように表現していくことを目的に、layerを作っていきます。

Layerを作る練習は、small talkで行います。また、文章の中でどこがlayerを形成しているのかを見ていくのも、楽しい学びの時間です。

長文読解、とか、文法学習とか一つ取っても、単に穴埋め問題を解いたり、並べ替え英作文を正答したりすれば文法が分かったことになるか、と言えば、全くそんなことはありません。
機械的なドリルを演習すること自体を否定したりはしませんが、繰り返しドリルをして全問正答出来るようになっても、英文の中に底流しているロジックを見抜くことは絶対に出来ないのです。

英文法を教えるとき、この考え方をまず最初に教えて、英語はこんなルールで文章が成り立ってるんだよ、っていう話を子供達にしてあげた方が親切なのではないか、と思います。

たとえば、英文法の第一時間目に、子供達はS/V/O/Cの文の種類を、習いますが、それらの文の種類が、段落や一つの文章に編まれて行くとき、どのように展開していくか、という流れは学びません。文法書にそんなことは載っていないからです。

S+Vという最小単位がまずあり、文の種類がSV,SVCA=Bの文),SVO3種類で出来ていて、その後ろにどんどん付け足しの情報が来る流れで文章が編まれて行く。

付け足しの情報は、「名詞+α」のユニットで、+αの部分は、分詞、不定詞、関係詞、同格、前置詞+名詞、の形が来る、と教えます。後ろからかかる、と理解するのではなく、名詞はどんな物なのか、後から後から付け足し情報を加えて、より詳しくそのものを説明する、と生徒には教えています。

★文法書に欲しい要素
文法書は、細かい文法事項の記述はびっしりとあります。しかし一方で、英文全体がどんな風に構成されているのか、その文法事項がどんな風に有機的にそれぞれと結びつき合っているのかについて、記述が一切ないものばかりな気がしています。

英語はどんな風に構成されているのか、どんな風な流れて文章は作られているのか、どのような考え方に基づいて成り立っているのかを最初に教えて、その後に細かい文法について生徒に教えても良いと思うんです。

速読の仕方とか、ディスコースマーカーについての記述は、高2や高3の問題集や参考書の巻末に申し訳程度に掲載してあることが常で、これは英語を理解する生徒達にとって、勿体ないのでは、と僕はずっと思っています。

些細な文法事項を見ていく前に、全体はどんな風になっているのか、「森全体」を見せて、その後、細かく見ていく、という俯瞰的な視点で文法指導をした方が、生徒の理解にとっても宜しいのでは、と僕は思っています。

教科書のトレーニングをさせるときには、「森全体」を見る指導を丁寧にします。どうしてこの文章はこういう流れになっているのか、段落ごとには流れはどうなっているか、この文は全体の中でどういう位置づけになっているか、この英文全体で大事なキーとなるセンテンスは何か、などの事項ですね。

細かく読めるように指導をする前にこういうことを教えておくと、その都度自分が今どんなことをやっているのか、確認が出来るようになり、迷子にならずにすみます。細かいことばかりに目を向けていると、一体何の為にこれを学んでいるのか、ということが見えにくく、分かりづらいことがしばしばです。文法学習の悩ましいところはこういうところにあるのではないか、と僕は思っています。

今教えている生徒達には、森を見る訓練を丁寧にしていきたいと思っています。これは今までの生徒達にも教えてきたことですが、そちらの方が、英語全体を見る癖がつきますし、俯瞰して英文を見る癖がつくような気がしています。

一語一句を逐語訳的に見ていくのは、とても時間が掛かりますし、結局何が大事なのかが、わかりにくく、子供達も骨が折れて、気持ちが辟易してしまう気がします。僕も高校生の時、そうでした。

英文全体を見ていく癖をつけていく、何が大事なのかをサッと読み取る習慣をつけるために、毎時の授業で地道に指導していくしかないな、と思っています。

ではまた^^

★追記1
そうそう。本稿とは無関係ですが、「多読」について良いブログの記事がありましたので、転載しておきます。先生も読書をきちんとしないといけない、というお話です。また、生半可な気持ちで多読指導はできない、という諫言ですね。多読を受験指導と思っている向きにもNOが書かれてあります。良い記事でした。


★追記2★




このブログを、今教えている生徒達も読んでくれているみたいなので、僕のOEDノートを画像で載せておきます。良ければ真似してね^^

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