2016年4月28日木曜日

同時通訳トレーニングを中高生の授業でやる実践

僕は29歳の時、同時通訳者である国井信一先生と橋本敬子先生の著作である「KHシステム」を通して、同時通訳の方の英語トレーニングメソッドを学びました。その後、実際に国井先生と橋本先生が主催されるセミナーに参加し、鍛えて頂いて、飛躍的に自分の英語力アップを実感する、という貴重な経験をさせて頂きました。

その後、30代の10年間と、+4年間、自分でそのメソッドを徹底的に応用し、毎日同時通訳TRをしながら過ごしました。「英語を英語のまま理解する」回路は、これらのトレーニングを通して身について行ったと実感しています。

授業の中でその方法論を取り入れ、生徒達にもぜひこの力をつけて欲しい、と願って実践を始めたのが12年前。授業のプリントをすべて同時通訳トレーニング仕様にし、生徒達にメソッドを伝え、授業中にトレーニングをさせ始めました。

同時通訳トレーニングは、生徒達に英語をインプットするのにとても効果的なメソッドを含んでいます。音の仕込みをして単語の読み方やフレーズの発音などを学び、その後、和訳を読み込むことによって意味を体に落とし込み、更に日本語の意味と英語を一体化させていくのです。

このメソッドは、何にも勝る可能性を秘めています。聴く力、英語を読む力(読解と発音の両方)、英語のロジックを理解する力、英語のスピード感に慣れること、語彙や英文の駒を増やすこと、かたまりごとに英語を前から捉えていく力、和訳をしなくてもすらすらと英文を前から前から理解していける力、などです。

このメソッドで授業をすると、教科書の説明はもの凄いスピードで終了し(実質、1駒の授業で、帯活動を除いた展開の時間に、Lesson丸ごとの説明が終わります)、残った時間をたっぷりとトレーニングに充てることが可能になります。

僕は新しい学年でも、この同時通訳トレーニングを授業の中で取り入れています。英語を音読するのが苦手な生徒でも、音の仕込みと意味の仕込みをたっぷりとやって、その後にトレーニングすれば、誰でもシャドーイングを自分で出来る力がつきます。


授業で同時通訳TR実践


《同時通訳トレーニングの仕方:1つのレッスンは、1回につき1パート、が目安です。》
11パートの和訳を黙読(30秒:PREP読みをする。「ポイントは?理由は?具体的には?」の視点で読む)
2.読んだ内容を友達にPREPで説明する練習(理解の血肉化)
3.音の仕込み(意味は考えず、CDの音声に慣れる。この際に発音指導:大きな声で×2回)
4.和訳の黙読(30秒:再びすり込み)
5.日本語の意味を踏まえながら「この部分はこういう意味だよね。」と想像しながらCDと音読×2
6.自主トレ(自分で立体構造トランスクリプトを見ながらシャドーイング)
7CDと一緒に音読×1
8.何も見ずに、CDの音声のみでシャドーイング×2


1~6までが仕込み作業です。この作業を経れば、英語が苦手な生徒でも、日本語の意味と英文の音の一致がしやすくなります。頭で一致出来た内容を、体を使って一体化させ、その後、英語のみで理解していくのが、シャドーイングのトレーニングです。

シャドーイングは世の中でもてはやされていますが、実際にこのシャドーイングの効果や意味を本当に理解が出来ていないと、初見で何も分からない英文を無理矢理音のみでシャドーイングさせてしまうことになります。

シャドーイングは、音の仕込みと意味の仕込みを経て、その2つを一体化させていく作業です。この仕込みの作業を行わないと、シャドーイングの効果は0です。全く意味がありません。ですから、1~6の作業を徹底します。気が抜けないのです。

生徒に説明するときにはダラダラとはしません。手短にさっさと説明を済ませ、分からないところは体を使って、トレーニングをしながら覚えていってもらう手法をとっています。個別に生徒のところを回って、個別指導を入れていく作業も欠かせません。

6.の中に出てくる「立体構造トランスクリプト」というのは、英文を立体的に構造化し、英文ができる仕組みを視覚的に捉えて、英語をかたまりごとに理解しやすくするプリントのことです。このプリントも、国井先生、橋本先生に教わり、自分で中高生にわかりやすいように作り方に改良を加え、現在は自分の授業で必ず作成して生徒に配布しています。
立体構造トランスクリプトを使ったTRを授業で取り組んでいる最中の画像です。

※立体構造トランスクリプトを見てみたい方は、dropboxに、僕が作成したSteve Jobsのスピーチのものを入れていますので、ご覧下さい。

又、和訳も先に配ります。和訳の中身を読ませ、その中身を友達に日本語で説明させる訓練を通じて、文章の読み方、要点のつかみ方、言葉による説明の仕方を実際に体験してもらいながら、これらの技術を身につけてもらうことが狙いだからです。
和訳を読み、読んだ内容をPREPで友達に日本語で説明するトレーニング

このトレーニングは1パート(1セクションという言い方を取る教科書もあります)を終えるのに10分弱しか掛かりません。授業では、どんどんパートを進むのではなく、1つのパートをしゃぶり尽くすようにトレーニングし、英語が確実に身についた、と生徒に感じてもらい、1コマの授業の中で、自らのパフォーマンス向上を実感してもらうのが目的です。

ここでも「焦らず、たっぷり、ゆっくり」が基本となります。

このトレーニングを教科書全編を使ってやっていきます。1年後には、子供達に恐ろしいほど強く太い英語の回路が身についています。

この効果は複数の学年で実証済みですので、今年も1から丁寧に指導をし、オーガニック指導(多読、英英辞典による語彙指導、読み聞かせ、英語の歌、スモールトークやディスカッションでのスピーキング活動)と併せて生徒達に取り組んでもらっています。

インプットとアウトプット、インテイク、すべてを縦横無尽に絡め合いながら、1週間の授業が瞬く間に終わっていく、という感じです。生徒達のこれからの頑張りがとても楽しみですね^^

最後になりますが、今の自分があるのは、宮崎県の中別府温和先生、KHシステムの国井信一先生、橋本敬子先生のおかげです。彼らがいなければ、今の自分はありません。先生方は僕の絶対的な師であり、弟子である僕が師の背中を超えることは絶対にできません。彼らが僕を育て、ここまで成長させてくださいました。僕は彼らに足を向けて寝ることは絶対にできません。

この場をお借りし、3名の先生方に感謝をしたいと思います。
中別府先生、国井先生、橋本先生、本当にどうもありがとうございます。先生が僕に施してくださった教育を、教え子や多くの先生方にお返ししていきます。先生方から受け継いだバトンをつないでいきます。

ではみなさん、また^^

追伸:授業や取り組みなどのご質問がある場合、ブログにて出来る限り紹介させて頂きたいと思っています。お気軽にご連絡下さい。


多読の授業は忙しい。

多読の授業を初めて2週間が過ぎました。子供達はめいめい本を手に取り、音読をしながら読んでいきます。

多読の授業と言うと、「生徒に本を勝手に読ませて、先生はすることがない。」と思ってらっしゃる方もいらっしゃると伺ったことがあります。これはとんでもない認識の誤謬です。

授業が始まると、生徒達の様子を見ながら、教室中を行ったり来たりして、生徒達が躓いていないか、読み方が分からない単語がないか、熱中できているか、など、様子を観察しながら徹底的に個別指導を入れていくので、休む暇がありません。

気がつけば50分の授業が終わっていた、というような具合で、とにかく生徒達一人一人が集中して本を読む時間を作ってあげて、躓いた時に寄り添い続けることが大切です。

初めての授業から2回目、昨日の多読の授業のポイントは以下の2点でした。

「レベル1+からレベル3までの本を読破するつもりでやろう。」
「ゆっくりじっくり絵を見て、どんな様子か、何をしているところか、絵に何が書かれているかを見よう。」

文章や単語の意味が分からないとき、辞書を引いたり調べたりは一切しません。絵を見ながら、その単語が使われている流れや様子を見て、意味を類推していく作業の繰り返しです。

子供達が自分自身の力で意味や語義に到達していくお手伝いをするのが先生の仕事でして、これは喩えて言いますと、有機栽培や、自然飼育に似ています。とにかく、気が遠くなるような手間が掛かるのです。

多読の授業、英英辞典の活用、絵本の読み聞かせ、毎回の授業でのスモールトーク(スピーキング活動)などはすべて、結果を急いでしまったり、成果を数値化するような指導ではなく、生徒達が自らの力で、「英語を英語のまま理解する回路」を育てていく指導法です。

これをやったからすぐに模試の成績やテストの結果が出るわけでもありませんし、検定に合格したりするものではありません。

一方で、自然な方法で育てられた野菜やお肉がとてもおいしくて、体にもとても優しいように、有機栽培のような姿勢で子供達を育てていくと、子供達に笑顔が溢れ、毎日の授業の中で、子供達は生き生きとします。

生徒達は「英語をやらされている」「英語の勉強をしなければいけない」「宿題や再テストがとても多くきつい」など、威圧感や圧迫感を感じることがなくなります。自ら学ぶ力をつけた子供達は、人からやらされて即戦力を身につけた子供達よりも強く逞しいのです。

この手間を惜しむと、子供達に自ら育つ力はつきません。子供達に対して教師が取る態度は、「愛情溢れる母親のような温かさと忍耐を持って、子供達を見つめ、励まし、受け止める」ことです。子供達はいろいろな間違いをします。失敗もします。その時に我慢して教えない。徹底して子供達が気づくまで待つ。気づく為のヒントはあげる。でも、答えや正解をけして教えない。

若い頃の授業を振り返ると、子供達にトレーニングをさせ、徹底して単語帳を使って鍛え、文法問題を死ぬほど解かせて、これで子供達は鍛えられた、と自己満足の世界に浸っていたんだな、とわかり、とても恥ずかしい気持ちになります。

追い立てるような指導をしなくても、子供達は伸び伸びと学びます。自ら気づきます。躓いている友達と励まし合って共に力をつけていく流れができていきます。

そういう授業をするのに、20年の時間が掛かりましたが、今こうして子供達が生き生きと授業中に活動をしたり、言われなくてもどんどんオックスフォードの英英辞典を引いて語義をノートに書き、イラストを添え、気づきや発見のコメントをつけている姿を見るのが幸せで仕方がありません。多読の時に生徒達と読み聞かせをしあったり、絵の説明をお互いに英語で言い合うことがとてもうれしい。こんなに子供達が生き生きしている、自分は20年間、何を教えてきたんだろう、そんな気持ちに気づかせてくれます。

話が長くなりました。子供達の多読の様子を見て下さい。すてきな時間を与えられている恵みと幸せに、感謝しています。

易しいレベルの本を追加しました。

生徒と一緒に1ページごとに読み聞かせをし合いました。

夢中になって多読に取り組む子供達。高校一年生です。



もっとも大いなるもの

単語の綴りを一生懸命練習するけれど、何度も、何度も間違える子がいる。 でも、授業中、何度もうなづきながら説明を聞き、話に耳を傾け、大きな声で歌を歌う。フォニックスの発音を、口を縦横いっぱいに開けて発音する。 oshienと単語テストに書いてきた。oc...