2015年5月11日月曜日

英国英語に学ぶ

具合悪くて、今日は早退させて頂きました。春風邪に罹患した後、免疫力が低下していた所に食あたりによる極度の下痢に見舞われた為です。病院に行きました。年に二度ほどしか具合は悪くならないのですが、上半期の一回目がこれに当たります。ご迷惑おかけし、申し訳ない気持ちです。

家ですることも特になく、夕方から、日曜日よりTRを始めたエリザベス女王のスピーチの音読とシャドーイングをやって、英文を分析していました。


簡単な不定詞、簡単な分詞構文、簡単な関係代名詞が多用され、誰が聞いても分かり易い英文がこれでもか、これでもか、と繰り返される良文の塊の様な素晴らしいスピーチでした。気品に満ち、自信に溢れ、国民への愛情が溢れる素晴らしいスピーチでした。いずれ構造表を拵えて、自分でTRする用にアレンジしたいと思い立ち、テキストをコピペして、構造表を作っています。生徒に是非聞かせたいし、是非TRさせたい英文です。こういう英文をどんどんトレーニング教材にすべきなのではないか、と思いました。


女王陛下が使う英語は、庶民が使う英語と違うと思っていましたが、極端な差異はなく、平易で分かり易い英語でした。whilstという単語が使われていたり(whileの古い言い方)、My Lords and Members of the House of Commons.という風に政治家に呼びかける以外は、平易な文法内容が多用されました。


例えば、冒頭で述べられる英文です。
To strengthen the economy and provide stability and security,
my ministers will continue to reduce the country’s deficit,
helping to ensure that mortgage and interest rates remain low.

我が国の経済を強化し、安定と安心をもたらす為、
諸大臣は財政赤字の削減に引き続き努め、
ローンの利率を低く保つことを保証するよう働きます。


不定詞の名詞的用法は中高生の基本事項です。continue to do は中学三年生程度であれば、教科書で習っていなくとも理解は容易ですし、
その後のコンマの後に導かれる、,helping ~も簡単な分詞構文です。


この他に特に見られる文法事項としては、助動詞+be + p.p.の形が多用されています。これは、女王陛下からのorderの様な形を取ると命令文が使われるのでしょうけれど、これは文法的には正しいかもしれませんが、聞き手にとっては耳障りの良くない言い口になりますので、女王陛下から暗に、「その結果については、政治家に委ねられているのです」という遠回しな言い方を取り、宴曲表現として相手に行動を促す形を取る為だと考えられます。



Legislation will be introduced to help make the United Kingdom the most attractive place to start, finance and grow a business.

法案が導入されるでしょう、という表現を敢えて用いることにより、誰がするのか、という責任の所在を暗に曖昧にしておきながら、一方でそれを聞いた人がそれに向かってcommitする様に巧妙に英文が編まれている。こんなことを数百年行なって来た英国政治の歴史を、この、助動詞+be+p.p.の形から読み取れずにはおれません。

僕が一等好きだった一節はこれです。

A key priority for my ministers will be to continue to build an economy that rewards those who work hard.

諸大臣の最優先課題は、経済を引き続き立て直す事、それにより、額に汗する人が報いを受ける事ができるようにすることです。

passage全体は、政治家が起草し、それを女王陛下が代表して読む形を取っていますので、細かい法案、例えば住宅ローンの利率を下げる事、賃金の引き上げに関すること、退職金の資金運用に関する事、年金の運用に関する話、教育の機会均等に関して、学校給食の無償化、人身売買の禁止、スコットランド独立機運への牽制、EU問題、ロシアとウクライナの問題、シリア、アフガン、イランの核問題、など、多岐に亘ります。


それらは全て、政治的用語で語られているのが通常なのですが、先に上げた一文は、それら政治的用語に挟まれた唯一の文学的用語だったからです。ここを間に挟む事により、聴衆の心を鷲掴みにし、国民世論を統一させる狙いがある。昔の日本の政治家にも、政治的用語を文学的用語に置き換えるのが上手な政治家が多くいましたが、残念ながら今の日本に、これが巧みにできる政治家は見当たらない様に僕には思えます。


米国の民主党の政治家には、特にこの技術に長けている人が多く見られます。基本的には、共和党も民主党も、スピーチの修辞法に長けていないと米国では政治家は務まりませんが、言論により立つ国民性の強さを、英国議会や米国議会の実際の中に垣間みる気がして、胸が躍りました。政治の妙を感じるのです。


さて、上記のようなことを鑑みると、コミュニケーション能力をもっと上げていくことだけに焦点を絞ると、関係詞、分詞構文、不定詞の大切さを改めて思い知らされたと共に、極端に難解な構文を高校生に教えるよりも、女王陛下のスピーチに出て来る様な平易な文法事項、文法構文を何度も繰り返しトレーニングによって身につけさせ、それを使えるように暗唱させる方が、余程大事なことではないか、と思いました。


難しい英文を理解するのは文献を読む為にはぜひとも必要なのですが、英語を使って話す、意見を言う、意見を書く、という時には、殊更難解な修辞法を多用する事よりも、平易できちんとした構文や関係詞、分詞構文をどんどん使える方が大事で、難解な修辞法の理解は、もっとたくさんの量を読む様になってからでも良いのではないか、と思いました。


その意味で、中学三年生年代から、高校二年生年代に掛けて、特に英語1の時間にやると良いと思いますが、関係詞、不定詞の構文、分詞構文を使った簡単な英作文の多用で、生徒の英語運用力を徹底的に鍛えた方が、最終的に英語でよいプレゼンテーション、良いディベートが行なえるのではないか、と認識を新たにしました。


また、同時に、中学1、2年段階では、毎回の授業で、簡単なQ&Aセッションを行ない、Yes/No QuestionやInformative Questionを相手に瞬時に言え、また聞き手として、それらの質問に瞬時に応えるTRが大量に必要である、と感じました。

その後、腹が痛み出したので、少し箸休めをしようと思い、英国国会の中継映像を見ていました。


デヴィッドキャメロン首相が、国会で議員の質問に応える形です。
英国の首相は、あらゆる議員の代表質問の質疑に立ち、きちんと応える形を取っていました。
時折原稿に目を落としてきちんと述べる面もありましたが、聴衆の目を見ながら、機知に富む発言をきちんと行ない、相手を説得する理由付け、具体例の提示、具体的な数字の提示をきちんと行なっていました。
我が国の国会の様相とは全く異なっていました。我が国の政治家とは全く異なって彼らが見えました。

https://www.youtube.com/watch?v=QF8pM4wiLaY

英国人の政治家のスピーチを真面目に聞き出したのはこれが初めてですが、10年間ほど米国政治家の討論番組を見たり、大統領選を追ったりしていて、英国人政治家の発言を初めて聴いて感じた感想は、米国人の政治家よりも、英国人の政治家の表現の方が、回りくどい言い方をしないな、ということでした。


米国では、様々な考えが交錯しており、一つの発言が意図とは別の視点で受け取られ、政治家はしばしば釈明に追われます。そういう場面が執拗に報道される様は、日本のそれと変わりがありません。



英国の政治を見るのはこれが初めての体験なので、断定的な表現は避けたいのですが、英国の世論や国民性について、揚げ足を取る事もするけれど、ジョークやユーモアで政治家を茶化したり、バカにしたりすることはあっても、討論や議論の現場では、言葉をきちんと選び、回りくどい言い方をせず、きちんと述べる、という行為が、質問をする側にも受ける側にもあらかじめ約束されている、という印象を受けました。


ここに、英国人の物の見方、考え方、議論や討論の進め方の妙を見る気がし、尊敬の念を抱きました。
先日の保守党の勝利もあり、英国政治もこれから注目が続きそうなので、暫く英国議会や政治の妙を楽しみながら、英語のトレーニングを続けて行こうと思いました。

ではまた^^

もっとも大いなるもの

単語の綴りを一生懸命練習するけれど、何度も、何度も間違える子がいる。 でも、授業中、何度もうなづきながら説明を聞き、話に耳を傾け、大きな声で歌を歌う。フォニックスの発音を、口を縦横いっぱいに開けて発音する。 oshienと単語テストに書いてきた。oc...