僕は29歳の時、同時通訳者である国井信一先生と橋本敬子先生の著作である「KHシステム」を通して、同時通訳の方の英語トレーニングメソッドを学びました。その後、実際に国井先生と橋本先生が主催されるセミナーに参加し、鍛えて頂いて、飛躍的に自分の英語力アップを実感する、という貴重な経験をさせて頂きました。
その後、30代の10年間と、+4年間、自分でそのメソッドを徹底的に応用し、毎日同時通訳TRをしながら過ごしました。「英語を英語のまま理解する」回路は、これらのトレーニングを通して身について行ったと実感しています。
授業の中でその方法論を取り入れ、生徒達にもぜひこの力をつけて欲しい、と願って実践を始めたのが12年前。授業のプリントをすべて同時通訳トレーニング仕様にし、生徒達にメソッドを伝え、授業中にトレーニングをさせ始めました。
同時通訳トレーニングは、生徒達に英語をインプットするのにとても効果的なメソッドを含んでいます。音の仕込みをして単語の読み方やフレーズの発音などを学び、その後、和訳を読み込むことによって意味を体に落とし込み、更に日本語の意味と英語を一体化させていくのです。
このメソッドは、何にも勝る可能性を秘めています。聴く力、英語を読む力(読解と発音の両方)、英語のロジックを理解する力、英語のスピード感に慣れること、語彙や英文の駒を増やすこと、かたまりごとに英語を前から捉えていく力、和訳をしなくてもすらすらと英文を前から前から理解していける力、などです。
このメソッドで授業をすると、教科書の説明はもの凄いスピードで終了し(実質、1駒の授業で、帯活動を除いた展開の時間に、Lesson丸ごとの説明が終わります)、残った時間をたっぷりとトレーニングに充てることが可能になります。
僕は新しい学年でも、この同時通訳トレーニングを授業の中で取り入れています。英語を音読するのが苦手な生徒でも、音の仕込みと意味の仕込みをたっぷりとやって、その後にトレーニングすれば、誰でもシャドーイングを自分で出来る力がつきます。
授業で同時通訳TR実践 |
《同時通訳トレーニングの仕方:1つのレッスンは、1回につき1パート、が目安です。》
1.1パートの和訳を黙読(30秒:PREP読みをする。「ポイントは?理由は?具体的には?」の視点で読む)
2.読んだ内容を友達にPREPで説明する練習(理解の血肉化)
3.音の仕込み(意味は考えず、CDの音声に慣れる。この際に発音指導:大きな声で×2回)
4.和訳の黙読(30秒:再びすり込み)
5.日本語の意味を踏まえながら「この部分はこういう意味だよね。」と想像しながらCDと音読×2回
6.自主トレ(自分で立体構造トランスクリプトを見ながらシャドーイング)
7.CDと一緒に音読×1回
8.何も見ずに、CDの音声のみでシャドーイング×2回
1~6までが仕込み作業です。この作業を経れば、英語が苦手な生徒でも、日本語の意味と英文の音の一致がしやすくなります。頭で一致出来た内容を、体を使って一体化させ、その後、英語のみで理解していくのが、シャドーイングのトレーニングです。
シャドーイングは世の中でもてはやされていますが、実際にこのシャドーイングの効果や意味を本当に理解が出来ていないと、初見で何も分からない英文を無理矢理音のみでシャドーイングさせてしまうことになります。
シャドーイングは、音の仕込みと意味の仕込みを経て、その2つを一体化させていく作業です。この仕込みの作業を行わないと、シャドーイングの効果は0です。全く意味がありません。ですから、1~6の作業を徹底します。気が抜けないのです。
生徒に説明するときにはダラダラとはしません。手短にさっさと説明を済ませ、分からないところは体を使って、トレーニングをしながら覚えていってもらう手法をとっています。個別に生徒のところを回って、個別指導を入れていく作業も欠かせません。
6.の中に出てくる「立体構造トランスクリプト」というのは、英文を立体的に構造化し、英文ができる仕組みを視覚的に捉えて、英語をかたまりごとに理解しやすくするプリントのことです。このプリントも、国井先生、橋本先生に教わり、自分で中高生にわかりやすいように作り方に改良を加え、現在は自分の授業で必ず作成して生徒に配布しています。
※立体構造トランスクリプトを見てみたい方は、dropboxに、僕が作成したSteve Jobsのスピーチのものを入れていますので、ご覧下さい。
又、和訳も先に配ります。和訳の中身を読ませ、その中身を友達に日本語で説明させる訓練を通じて、文章の読み方、要点のつかみ方、言葉による説明の仕方を実際に体験してもらいながら、これらの技術を身につけてもらうことが狙いだからです。
このトレーニングは1パート(1セクションという言い方を取る教科書もあります)を終えるのに10分弱しか掛かりません。授業では、どんどんパートを進むのではなく、1つのパートをしゃぶり尽くすようにトレーニングし、英語が確実に身についた、と生徒に感じてもらい、1コマの授業の中で、自らのパフォーマンス向上を実感してもらうのが目的です。
ここでも「焦らず、たっぷり、ゆっくり」が基本となります。
このトレーニングを教科書全編を使ってやっていきます。1年後には、子供達に恐ろしいほど強く太い英語の回路が身についています。
この効果は複数の学年で実証済みですので、今年も1から丁寧に指導をし、オーガニック指導(多読、英英辞典による語彙指導、読み聞かせ、英語の歌、スモールトークやディスカッションでのスピーキング活動)と併せて生徒達に取り組んでもらっています。
インプットとアウトプット、インテイク、すべてを縦横無尽に絡め合いながら、1週間の授業が瞬く間に終わっていく、という感じです。生徒達のこれからの頑張りがとても楽しみですね^^
最後になりますが、今の自分があるのは、宮崎県の中別府温和先生、KHシステムの国井信一先生、橋本敬子先生のおかげです。彼らがいなければ、今の自分はありません。先生方は僕の絶対的な師であり、弟子である僕が師の背中を超えることは絶対にできません。彼らが僕を育て、ここまで成長させてくださいました。僕は彼らに足を向けて寝ることは絶対にできません。
この場をお借りし、3名の先生方に感謝をしたいと思います。
中別府先生、国井先生、橋本先生、本当にどうもありがとうございます。先生が僕に施してくださった教育を、教え子や多くの先生方にお返ししていきます。先生方から受け継いだバトンをつないでいきます。
ではみなさん、また^^
追伸:授業や取り組みなどのご質問がある場合、ブログにて出来る限り紹介させて頂きたいと思っています。お気軽にご連絡下さい。