充実した夏休みだったのは良かったのですが、通常の受験対策授業に戻った時、どうやって授業を展開したら良いのだろうか、と迷いが生じていたからです。
TETE(Teach English Through English)を実践しようにも、高校三年生の子供達は受験を控えています。受験勉強とAll in Englishは相容れないのではないか、普段は怖いもの知らずで恥知らずな僕の心の中にも、わずかながら不安が過っていたのだと思います。
8月の後半に、ICU(国際基督教大学)に研修に出掛けて行き、有意義で学び深い2日間を過ごしていたので、まずは自分に出来る事をやろうと考え、3クラスの授業で授業改善を行いました。
7月の大分県での発表、および暁の会京都ジョイントの際に参加された先生方にお伝えした、"Blending & Balancing"を実践する絶交の機会だと考え、言い出しっぺの僕がこれをやらなければ、と思い、2学期の授業開きで実践しました。
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The Japan Timesの記事より
授業内容:語彙の復習と、長文読解
タスク:英語によるガイダンスを聴き、日本語で話し合い
その後、英語による解説を聞き、考えを深める。
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語彙の説明は日本語で行なった方が良いのではないか、と思っていましたが、ユメタンという単語帳を使って、英語で質問を投げかけながら、語彙指導を英語で行ないました。今までにもこれに似た活動を仕組んだことはありますが、長い時間を掛けて、じっくりと英語で語彙指導を行なったのは久し振りでした。とても有意義でした。子供達に気付きや新しい発見を促すことができ、充実感がありました。
The Japan Timesの記事は、「オリンピックのエンブレム盗作問題」に関する記事を用いて、Media Literacyをどう高めて行くか、という結論をゴールに、記事の内容を読み、友達と記事の内容について日本語で説明する(要約)活動を行い、その後、この話に関するinside storyを僕が英語で説明する、という流れを汲みました。
盗作という行為そのものに関しては、その是非は問われるべきだけれど、そのことと、本人の人格、人間性、今までの背景まで全否定されかねないネットでの袋だたき行為'Crowd bullying’って絶対にやってはいけないことだよね、と英語で語りかけ、締めくくりました。
また、今日の放課後は、自分のクラスで受験に向けた補習がありましたので、その補習では「慶應義塾大学」の長文と、The Japan Timesの新たな記事を用いて要約に取り組みました。
この補習を終えた後、自分のクラスの生徒達のことを本当に愛おしく思いました。ほぼ英語での説明をしつつ、子供達にとって理解が難しい箇所に日本語を用いて説明を加え、再び英語で発問を続けるという形態を通して90分の補習を終えました。受験指導を英語で話しながら行なうなど、自分にとっても人生で初の試みでした。
今まで自分が、「受験生にとって、All in Englishで授業を行うなんて、狂気の沙汰ではないか。」と思っていたことが恥ずかしくなりました。子供達は英語で語りかける僕の話を真剣に聴いてくれます。誰も馬鹿にしたり、先生、日本語で全部やってくれよ、なんて顔をしません。僕は本当に自分のクラスの生徒達に恵まれています。授業が終った後、あの子達を抱きしめたくてたまりませんでした。
ある未知語の対立概念を教える時にも、日本語でズバリその単語の意味を言ってしまえばそれで終わりですが、Oxfordの辞書で調べた語義だけを板書し、この単語はなんでしょう、と英語で尋ね、子供達同士に考えさせるだけでも、答えと解説を聞いて終わり、というような不毛な授業とは様相を異にしていました。刺激の与え方、子供達への語りかけの仕方、発問の立て方など、昨日と今日の授業の中に、答えが沢山詰まっていた様に感じています。
受験指導は「All in Englishと、時折日本語のBlending」で十分にやっていける、そのように強く確信しました。
昨日と今日の授業では、子供達のoutput活動はほぼありませんでしたが、来週にその活動をして継続性を持たせたいと思っています。その際、同じ新聞記事ネタでは子供達に刺激が足りないので、仕掛けが必要だと思っています。
僕が昨日と今日で気をつけた点は以下の点です。
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【TETE(Teach English Through English w/using Japaneseの指導のポイントと教員が憶えておくべき留意点】
★英語で子供達に多くの「平易な英語の質問」をすること。
★話し合いをさせるとき、ヒントが少ないセッションでは日本語で話し合いをさせ、授業の活動の取り組みのハードルを下げること。
★理解が難しい表現や言い回しは、2回でも3回でも繰り返し語りかけてあげること。一度目はナチュラルスピードの英語でも良いが、2回目、3回目の説明では、ゆっくりと、はっきりと語りかけること。
★子供達に英語で語りかける時、名詞構文や関係詞を多用し、子供達が苦手とする構文や関係詞に対して免疫をつけさせること。
★答えをすぐに教えるのではなく、子供達に考える時間をあげる
こと。
★指示を明確にすること。
★子供達に与えるタスクの目的、目標を、自分(教員)が明確にして子供達に語りかけること。
★ただ音読させるだけ、ただ覚えさせるだけ、を止めること。音読と暗唱・暗記に目的を持たせること。何の為にそれをしているのかを明確にすること。
★抽象概念を説明する時に、具体例を必ず2、3提示し、自分が
話す英語が常にロジカルに、PREP構造になっていることを意識し続けること。
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昨日、今日の授業開きがこんなにも達成感を持ったものになるとは思っていませんでした。夏休みにICUで勉強したこと、毎週、暁の会on the webで参加者の方々とトレーニングを続けていること、普段自分がニュースを英語で読んでいることなどが、この2日間の授業に見事に昇華されました。
深い学びが良質のアプトプットへと変化して行く過程を、これほどまでに深い実感を伴って感じることができたことを、授業を受けた子供達に感謝したいと思います。
子供達に良質のインプットを与え続け、意義あるインテイクを繰り返し、良質のアウトプットを促して行きたいと心から思いました。
思えば僕も、無意味なインテイク活動を盲目的にやらせていたものだ、と8年前からの自分の授業を反省しているところです。
過去の自分にこんな風に問いかけてみたいです。反省の材料になると思っています。深い自戒です。
「立って音読させるのは何のため?」
「タスクになぜ罰ゲームが居るの?」
「繰り返し読ませることの意味は何?」
「単語は意味を言えばおしまい?それは語彙指導になるの?」
「単語帳の使い方に工夫はあるの?語彙指導にオーガニックな広がりがないけれどそれでいいの?」
「大意要約はロジックパターンを教えておしまいなの?」
「教科書のマニュアルと受験指導テクのマニュアルを読んで授業をすれば、それが良い授業なの?」
「文法指導はただ教えればおしまいなの?子供達に考える時間はあるの?発問はしなくていいの?」
「教材や教科書はマニュアルに書いてある通りにすればいいの?アレンジや工夫は生まれないの?」
「英作文の指導って、日本語分析なの?英語を英語のまま考えられるように子供達に発問出来てる?」
「厳しく子供達を鍛えることが良い英語の授業なの?」
「スパルタ教育は英語の授業に必要なの?」
「英語のトレーニングさえさせておけば、それは良い指導なのかな?」
過去の指導を受けた子供達に申し訳ない気持ちで一杯です。
過去の生徒達、ごめんね、俺、未熟だったんだ。まだまだ勉強不足だった。本当にごめんな。今度会った時に飯でも食いながら、未来の話を語り合おうな。
上述したことは、過去に僕が全て行なっていた授業形態です。反省一入。こんな授業をやっていたのか、と思うと、子供達に申し訳ない気持ちで一杯です。
夏休みが終わり、二学期が始まった矢先から、こんなに素晴らしく充実した授業が行えるとは思っていませんでした。子供達に深く感謝しています。
来週は2日間の授業を踏まえて、新たな展開を行ないます。楽しみです。「本当の英語のチカラが身に付く受験指導」を目指し、一生懸命に子供達に向き合い、授業を創って行きたいと思っています。
ではまた^^